長谷川研究室の研究対象

 当研究室では、表面物性、特に「表面輸送」をキーワードにして実験的研究を行っている。おもにシリコン結晶表面上に形成される種々の表面超構造や超薄膜を利用し、それらナノスケール低次元系に固有の電子状態や電子輸送特性、スピン状態・スピン流を明らかにし、3次元結晶の電子状態では見られない新しい現象を見出し、機能特性として利用することをめざしている。最近は、ビスマス系合金結晶に表れるというトポロジカル表面状態やグラフェン、シリセンモノレイヤー超伝導などの研究も行っている。このようなナノマテリアルの原子配列構造や原子層成長の制御・解析、表面電子状態、電子輸送特性、スピン状態、電子励起など、様々な実験手法を用いて多角的に研究を行っている。また、これらの研究のために、新しい手法・装置の開発も並行して行っている。

A 表面での電気伝導の研究

(1)
表面状態超伝導
   結晶最表面の電子状態「表面状態」は低次元系というだけでなく、空間反転対称性(パリティ)が破れている系であり、そこでの超伝導は興味深い性質を示す。当研究室では、シリコン結晶表面上に形成される種々の表面超構造を利用して、その超伝導特性の研究を開始した(
Phys. Rev. Lett. 110, 237001 (2013)). この新種の超伝導系は、高い臨界磁場やスピン偏極超伝導電流の可能性などが指摘されており、その実験を進めようとしている。

(2)
擬1次元金属表面状態での伝導
   シリコン結晶表面上に形成される表面超構造の中には極めて異方性の強いものがあり、擬1次元金属的な表面状態を示す。その代表としてSi(111)-4x1-In表面超構造が知られているが、我々は、パイエルス不安定性による金属絶縁体転移を示すことを光電子分光および電気伝導、STMによる電荷密度波の観測によって初めて示した(
Phys. Rev. Lett. 82, 4898 (1999))。その伝導のメカニズムも温度可変型4探針STMによって明らかにした(Phys. Rev. B 86, 035325 (2012))。さらに、最近では、さらに1次元性の強いSi(110)-Au表面系での研究を行っている。

(3)
表面状態での近藤効果
   金属的な表面状態を持つ表面超構造に極微量の磁性不純物原子を吸着させると、磁性原子と伝導電子とのスピン依存散乱、つまり近藤効果が起こることが期待できる。そのpreliminaryな結果をSi(111)-√7×√3-In表面上でのCo原子吸着によって示したが、Co吸着量を増やすとスピングラス的な様相も見せるようことが示唆された(K. Takase, Doctor Thesis 2009)。また、この表面は超伝導にも転移することが最近わかったので、磁性不純物の表面伝導での影響を系統的に調べている。

(4) 原子ステップの電気抵抗

(5) 表面状態伝導の異方性

(6) 表面状態へのキャリア・ドーピング


B ラシュバ型表面状態やトポロジカル表面状態およびスピン伝導の研究

(1)
スピン分裂した表面状態
   表面電子状態は、その片側は物質であり、反対側は真空なので、非対称な状況に置かれている。つまり、「空間反転対称性」が破れている。そのため、スピンアップの表面状態電子とスピンダウンの表面状態電子は異なるエネルギー状態をとる(スピン分裂)。とくに、スピン軌道相互作用の強いBiでは、大きなスピン分裂をもっていることを、スピン・角度分解光電子分光法(SARPES)で見出した(
Phys. Rev. B 76,153305 (2007))。トポロジカル絶縁体Bi2Se3の表面もスピン分裂したディラック・コーン状のバンド分散をもつことも示した(Phys. Rev. B82, 155309 (2010))。このようなスピン分裂した表面状態は、スピン偏極電流やスピン流が流れる舞台となる。

 (2) 電流誘起スピン偏極の検出


 (3) スピンホール効果の検出

 (4) スピン依存走査トンネルポテンショメトリーの開発

 (5) スピン偏極イオン散乱によるスピン偏極電流の検出

C 表面新物質の開発と物性研究

 (1) シリセンの合成と物性測定

 (2) 超格子多層膜による新物質

D 新実験手法の開発

 (1) 2探針STS(グルーン関数STM)の実現






原子配列構造の解明には;
反射高速電子回折(RHEED)
走査電子顕微鏡(SEM)、走査反射顕微鏡(SREM)
走査トンネル顕微鏡(極低温型、高温型、および室温型)(STM)
電子状態の解明には;
光電子分光法(全ブリルアン領域走査型角度分解光電子分光法)(ARPES)
走査トンネル分光法(STS)
電子輸送特性の解明には;
マクロ4端子プローブ法(Macro-4PP)
強磁場印加型マクロ4端子プローブ法(Magnetic-4PP)
ミクロ4端子プローブ法(走査電子顕微鏡と結合)(Micro-4PP)
極低温ミクロ4端子プローブ法(LT-4PP)
4探針STM法(4T-STM)